ショッピングカート
 砂上のエピタフ 
2017年11月 / 10月≪ 123456789101112131415161718192021222324252627282930≫12月

--.--.-- (--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告  |  EDIT  |  Top↑

2011.07.27 (Wed)

第3話 何もない場所からでも

基本、日曜日更新と言ったけれども、
1ヶ月更新ないのもアレなので、更新しておきます。
本当は日曜に更新しておく予定だったのですが、
どうしても納得いかない部分があって、
直しながら置いていたら、1ヶ月経過になってたよ!

にしても、本当に書く時間が無い。書く体力が残せてない。
どうしよう。何とかしよう。何とかなるのか。
せめて4話まではさっさと更新したいところです。

思った以上に濃くなってしまったお話です。
リライト論では最初は詰め込みすぎず、
読み流しても受けやすい話を書くべき
と確認したのに、どうしてこうなった。
地味に琴線に触れるテーマなのかもしれんねぇ。

【More・・・】

第3話 何もない場所からでも



 クロノス・デ・メディチ。
 中世ヨーロッパで多大な影響力を振るったメディチ家の末裔。
 貴族の血を受け継ぐ者。
 歴史が語るように、メディチ家は繁栄のための実学と権謀術数に長けていた。
 だが、その実、パトロンとして芸術家を積極的に支援した名家としても知られる。
 歴史の表舞台から退いても、本家が断絶しても、
 美しいものを尊重する心は変わらない。
 クロノスが現代で尊ぶものは、デュエルである。
 デュエルは美しい。
 お互いの愛着と夢をカードに託し、自分が信じる世界観を表現する。
 その最も洗練された形をデッキとして束ね、カードの技を通じて伝え合う。
 自分自身の闘う姿勢を通じて、その美学を伝えるアカデミア教師。
 クロノスはその職務を誇りに思う。

 その信念が打ち立てた、究極の巨人。
 それが今、目の前で打ち砕かれた。

「……ッ!!
 《古代の機械究極巨人》が倒されたとき、墓地から《古代の機械巨人》を
 その召喚制限を無視して、特殊召喚できるノーネ!!」

 だが、怯むわけにはいかない。
 今まで鍛えてきた技は、巨大モンスターをただ召喚するだけのものではない。

「攻撃表示で特殊召喚するノーネ!!」

 あのモンスターを前にしても、攻撃表示。
 生徒たちの間に、どよめきが走る。
 クロノスと機械巨人の勝利を狙う眼差し。
 シルキルは警戒を解かず、硬い表情で見守る。

 攻撃表示で向かうのは、まだ策があるから。
 巨大モンスターのサポートもまた、クロノスの鍛えてきた技。
 目の前には圧倒的な脅威が立ちはだかっている。
 ――これから見出すべき技を試すには、この上ないチャンスである。

「私のターンなノーネ!! ドローニョ!」

 引いたカードを目に、クロノスは心の中だけで考えを巡らす。
 いつも頼りにする切り札ではない。
 だが、勝機に繋げられるカードだ。
 しかし、1ターンだけ遅かった。
 そして、あと一手足りない。
 今取るべき手は――。

「《古代の機械巨人》を守備表示にするノーネ……。
 さらにリバースを2枚セットして、ターンエンドするーノ」

 どよめきが、クロノスの一手一手で、高揚にも落胆にも変わっていく。
 クロノスは厳しい表情のまま、場を見据えていた。
 今は相手を見極めるとき。
 《古代の機械究極巨人》を倒した相手なのだ。
 その力量と、力の在り処を見極めねば、勝てない。


「あのカードを引けなかったか……」

 藤原が焦れたように呟いた。

「あのカードって?」

 カード知識のそれほど広くない翼が聞き返す。

「クロノス先生には、この状況を打ち破る切り札がある。
 リミッター解除》。機械族の攻撃力を2倍にする速攻魔法。
 今の丸腰の《究極竜騎士》相手なら、それで打ち破れたんだ」


《リミッター解除》
【魔法カード・速攻】
このカード発動時に、自分フィールド上に表側表示で存在する
全ての機械族モンスターの攻撃力を倍にする。
この効果を受けたモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。


「ああ、あのカードか!
 そっか、守備表示にしたってことは……」

「今は手が揃うまで、待つしかない。
 そういうことだろう。
 だが、攻撃力5000を前にいつまでしのげるか……。
 ここからが本当の戦いになるぞ」


 クロノスらの冷静な観察をよそに、シルキルは手応えを噛み締めていた。
 この決闘で、初めてクロノスが守勢にまわったのである。
 どんなモンスターを召喚しても、間髪入れずに対抗してきた相手が、ようやく。

「私のターンです! ドロー!!
 《貪欲な壺》を発動です!!
 ブルーアイズ3体、ロード・オブ・ドラゴン、カイバーマンをデッキに戻して、
 そして、カードを2枚ドロー!」


《貪欲な壺》
【魔法カード】
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


 この力ならば、打ち立てられる。
 不確かなこの記憶の中でも。
 まとまらない意思の奔流の中でも。
 何もない場所からでも。
 何かを打ち立てられる強さを、ここに感じる。

「バトル!! もう一度攻撃です!
 『銀河に轟く滅びの烈波(ギャラクシー・クラッシャー)』!!」

 自らの宣言に即応し、攻撃を繰り出す騎士と究極竜の勇姿。
 高鳴りに体が打ち震える。
 機械が木っ端微塵に砕ける音が、とても心地よい。
 巨人になって人の骨を、まるで枯葉のように踏みしだく感触。
 この身に鳴り響く征服感。自分はやっと強き存在になれた。

「フフフフフ!!
 さらに装備魔法《強者の威光》を《究極竜騎士》に装着!
 カードを1枚伏せて、ターンエンド!
 そして、《強者の威光》の効果発動ッ!!」

 突然、《究極竜騎士》がまばゆい光を放つ。
 光は三日月の形になり放たれ、クロノスを襲う。


クロノスのLP:2500→1300


「オー、ディーオ!! この効果は……!」

「《強者の威光》は装備したモンスターのレベル×100のダメージを相手に与えます!
 《究極竜騎士》のレベルは最高値の12!!
 毎ターン、私のエンドフェイズに1200のダメージが発生します!」


《強者の威光》
【魔法カード・装備】
自分のターンのエンドフェイズ時、
相手ライフに装備モンスターのレベル×100ポイントのダメージを与える。


「グッ! 私のターンなノーネ! ドロー!」

 守勢に回ることにも、時間制限が課せられた。
 打破する一手を引き寄せられるか。
 もはや1枚のカードも無駄にはできない。

「モンスターをセットして、ターンエンドなノーネ!!」












シルキル
LP3500
モンスターゾーン
《究極竜騎士》
魔法・罠ゾーン
《強者の威光》(《究極竜騎士》に装備)、伏せカード×1
手札
0枚
クロノス
LP1300
フィールド魔法
《歯車街》
モンスターゾーン
伏せモンスター×1
魔法・罠ゾーン
《古代の機械城》、伏せカード×2
手札
0枚


「私のターン! ドローです!」

 クロノスにとって、1枚のカードが致命傷になりかねない場の状況。
 そして、シルキルにとって、一手一手が相手を追い詰める心躍る感触。

「魔法カード発動! 《アームズ・ホール》!
 デッキの上から1枚を墓地に送り、発動!
 デッキまたは墓地から、装備魔法を手札に加えます。
 選び取るのは――」


《アームズ・ホール》
【魔法カード】
自分のデッキの一番上のカード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキ・墓地から装備魔法カード1枚を手札に加える。
このカードを発動するターン、自分は通常召喚する事はできない。


 この手で握り締める。
 何者をも貫く確かな力を。
 偉大なこの力を直に(とどろ)かせる。

「貫通効果を得る《メテオ・ストライク》!」


《メテオ・ストライク》
【魔法カード・装備】
装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。


「むぅ。確かに高い攻撃力モンスターには最高のカードなノーネ」

 クロノスの表情が、今度は明らかに強張った。
 《強者の威光》のように時間の猶予もない。
 この攻撃を通せば、即座に負ける。
 率直なだけに、効果的なカードである。

 さらに墓地が輝き、効果の発動を知らせる。
 シルキルのフィールドに、綿毛のモンスターが2体浮かび上がる。

「《アームズ・ホール》のコストで墓地に送られたのは、《ダンディライオン》。
 墓地に送られたときに、綿毛トークン2体を自分の場に特殊召喚します」


《ダンディライオン》 []
★★★
【植物族・効果】
このカードが墓地へ送られた時、自分フィールド上に「綿毛トークン」
(植物族・風・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚する。
このトークンは特殊召喚されたターン、
生け贄召喚のためには生け贄に捧げる事はできない。
ATK/300 DEF/300


 攻撃力を持たないトークンが何になるのか。
 だが、勢いに乗ったシルキルは、そのすべてを自分の力として取り込む。

「さらにリバース永続罠発動! 《DNA改造手術》!
 場のすべてのモンスターをドラゴン族とします!!
 ドラゴン族が増えたことで、《究極竜騎士》の攻撃力も上昇!」



《DNA改造手術》
【罠カード・永続】
種族を1つ宣言して発動する。
このカードがフィールド上に存在する限り、
フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターは宣言した種族になる。



究極竜騎士(マスター・オブ・ドラゴンナイト) []
★★★★★★★★★★★★
【ドラゴン族・効果】
「カオス・ソルジャー」+「青眼の究極竜」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードを除く自分のフィールド上のドラゴン族モンスター1体につき、
このカードの攻撃力は500ポイントアップする。
ATK/5000 DEF/5000



《究極竜騎士》ATK5000→6000


「まさか! そのカードまで備えていたのか!」

 藤原は驚き立ち上がった。

「これで機械族の力を解放する《リミッター解除》は封じられた。
 クロノス先生が逆転する手段が……。
 いや、このままではこのターンをしのぐことさえ……!」

 《究極竜騎士》の力を極限まで生かす布陣。
 混沌の騎士は剣をかざし、流星とドラゴンの力を集約する。
 膨大な破壊のオーラが、空間が歪むほどに蓄えられる。
 そして――。

「装備魔法《メテオ・ストライク》を装備します!
 三度目の攻撃、これで終わりです!!
 《究極竜騎士》の貫通攻撃!!
 『銀河にあまねき轟く滅びの竜星群(ギャラクシー・ドラゴニック・メテオスウォーム)』!!」

 赤に緑に金に黒に銀。
 極彩色に互いが主張しあう破壊的な光線。
 何もかもの力が入り混じったシルキルの混沌たる攻撃。
 うねる破壊力が、クロノスを真正面から飲み込もうとする。

「――リバースカード、オープンなノーネ」

 クロノスは真っ向からカードを開いた。
 場に竜巻が起こり、光線から色を一つだけ取り去った。
 破壊光線はモンスターを跡形も無く飲み込む。
 だが、それだけで止んだ。


クロノスのLP:1300→1300


 それは赤。流星の色。
 クロノスが今生き残るには、これだけを排除すればいい。
 発動したのは、最も基本的な除去トラップ。

「《砂塵の大竜巻》で《メテオ・ストライク》を破壊。
 これで私に貫通ダメージは通らないノーネ」


《砂塵の大竜巻》
【罠カード】
相手フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。
その後、自分の手札から魔法または罠カード1枚をセットする事ができる。


 完全に決まったと思った攻撃。
 シルキルは動揺を隠さない。

「2ターン前から伏せていたリバースですと!
 《強者の苦痛》のときも、《DNA改造手術》のときも!
 いや、《歯車街》を破壊することだって、できたはずです!
 それをここまで温存していただと!!」

「勝負を決めるフェイタルな一手まで、対抗策を温存する。
 これを分からない生徒は本当に多いノーネ。
 その見極めが勝負を決定的に分けるーノ。
 逆転がデュエルモンスターズの華と呼ばれる所以なノーネ」

 シルキルの猛攻を受け流し、クロノスはディスクに目を移す。
 ディスプレイの表示は、『ドロー1』。
 破壊されたリバースモンスターの効果処理。

「セットしていたのは、《魔装機関車 デコイチ》。
 このカードがリバースしたとき、カードを1枚ドローするーノ!」


《魔装機関車 デコイチ》 []
★★★★
【機械族・効果】
リバース:カードを1枚ドローする。
自分フィールド上に「魔貨物車両 ボコイチ」が表側表示で存在する場合、
さらにその枚数分カードをドローする。
ATK/1400 DEF/1000


 引いたカードに目を移し、クロノスは再び静かに相手に目をやる。
 シルキルは言い知れぬ威圧感に、身をすくませながらも――。

「ターンエンド!
 ですが、このとき《強者の威光》の効果が発動!
 1200ポイントのダメージです!!」


クロノスのLP:1300→100


 もはや残りわずかとなったライフ。
 だが、勝負は決まっていない。
 クロノスが切り開いたチャンスが残っている。
 デッキにドローの手を伸ばす前に、クロノスは顔を上げた。
 目の前のシルキルに向き合う。

「自分のデッキは把握してるノーネ。
 何を引けば勝てるかも分かるーノ。
 状況を引き伸ばしできるカードは1枚だけ。
 あとは勝つか負けるかしかないノーネ」

 クロノスは闘いを振り返るように、少しだけ目を閉じた。

「もう勝ち方も負け方も、イメージできてるノーネ。
 もちろんその可能性も計算ができるノーネ。
 だから、勝っても負けても、悔いはないーノ。
 私のデッキの大型モンスターの展開も鈍っていない。
 新しく加えてみたドロー強化の手ごたえも得た。
 もう一つの新しい戦術も、実現の可能性は十分なノーネ。
 そして、あとはお互いに先にキーカードを引けるかどうか。
 それをあなたが先に引いていたなら、私は素直に負けを認めるノーネ。
 でも、一つだけ心残りがあるノーネ」

 クロノスは冷静に戦況を振り返る。
 もはや勝ちも負けも関係ないと言う。
 極限まで追い詰められた状況下でのこの語り口。
 得体が知れない。底が見えない。
 シルキルに、焦りと恐怖が湧き上がる。

「な、何が不満だと言うのです!
 私のこのデッキに不足があったとでも!?
 たまたま私の引きが良かったから、勝ったとでも!?」

「そんな批評なんて、とんでもないノーネ。
 あなたのデッキも、タクティクスも、ドローも素晴らしイーノ。
 だからこそ、残念なことがあるノーネ」

 クロノスはモンスターとシルキルを見比べ、続けた。

「あなたがどんな人か分からないことなノーネ。
 デュエルにはその人の好きなもの、目指したいもの、その気持ちの強さが現れルーノ。
 でも、今のあなたは、デッキも顔もあなたそのものではないーノ。
 本来のデッキ、そのままの素顔。それが分からないことが、とても残念なノーネ」

「私の本来……?
 私のそのまま……?」

 無意識にシルキルは後ずさりをしていた。
 クロノスの言葉が心を駆け巡り、胸騒ぎが止まない。
 ――どうして私は、私から変わろうとする?
 ――私がそのままでいるのは、どうしていけないことなのか?
 ――私が……、私が求めているものは何だ?
 ――何が私をそこまで駆り立てるのか?

「強く――」

 シルキルはうめくように呟いた。

「強くなければならない。
 私のそのままではいけない」

「どうしてなノーネ」

「それは……」

 理由を探り出そうとしたところで、――いつも通り思考が行き詰る。
 また、この感覚だ。
 過去や理由や動機を求めようとすると、決まってそうなのだ。
 思考の動きが止まり、急速に『必要でない』と思えてくる。
 代わりに、頭は別方向に動き出そうとする。
 自己保存の本能、現状把握の本能、問題解決の本能。
 本能に動機の下支えも、何もいらなかった。
 ――今を上手く切り抜けられれば、それでいい。
 流れ出る本能の意識に心を任せれば、それで良かった。
 楽だ。きっと自分には、そんな心の動きが馴染むのだ。
 所詮、自分は――。いや、もうどちらでもいいことだ。

「強さを求めることに、理由も何も要りません。
 生き残るために必要。強いほうが都合がいい。
 当たり前のことです。
 現実がそう望むのです。
 それに適応して、何が悪いのです!」

 シルキルの苦しげな様子。
 その後の何かを振り切ったような主張。
 クロノスは目線を下げ、対話を諦めた。

「あなたが自分から心を逸らすなら、そこまでなノーネ。
 現実に飲まれて、何も考えなくなるなら、それもいいノーネ。
 でも、それなら、私はあなたに負けるわけにはいかなくなったノーネ」

 クロノスはデッキにドローの手をかけた。

「教師は生徒を希望に導かなくてはいけないノーネ!
 現実なんて限界にぶち当たれば、誰でも嫌でも知るノーネ!
 なら、夢や目標を目指し続ける心を養うのが、教師の務めナノーネ!
 私が希望のデュエルを、ここで見せてやるノーネ!」












シルキル
LP3500
モンスターゾーン
《究極竜騎士》、綿毛トークン×2
魔法・罠ゾーン
《強者の威光》&《メテオ・ストライク》(《究極竜騎士》に装備)、
《DNA改造手術》(ドラゴン族を宣言)
手札
0枚
クロノス
LP100
フィールド魔法
《歯車街》
モンスターゾーン
なし
魔法・罠ゾーン
《古代の機械城》、伏せカード×1
手札
1枚


「私のターン、ドローニョ!!」

 クロノスは引いたカードに目を通し、すぐさまディスクに差し込んだ。

「私の勝ちなノーネ!」

 宣言に生徒のどよめきが歓声に変わる。
 シルキルの表情が、恐れに引きつる。

「《サイクロン》を発動するノーネ!!
 《サイクロン》はフィールドの魔法・罠1枚を破壊するカード。
 私はフィールド魔法《歯車街(ギア・タウン)》を破壊するノーネ!!」


《サイクロン》
【魔法カード・速攻】
フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。


 風が巻き起こり、クロノスの造り上げた機械の街が吹き飛ばされる。

「自分のフィールド魔法を、自分で破壊した?
 どうして、そんなことを……?」

 翼にはその理由が想像できない。
 フィールド魔法は、戦場を自分の有利な環境に変えるもの。
 自分から破壊する理由が思いつかない。

「《歯車街》のもう一つの効果だ」

 藤原がすかさず諭す。

「もう一つの効果……?」

「あのフィールド魔法の特性は召喚サポート。
 フィールド魔法として存在するときは、生け贄の緩和。
 そして、さらに破壊されたときに真価を発揮する。
 これがクロノス先生の得意とするトリックコンボの一つ……」

 クロノスはデッキから1枚のモンスターを選び出し、ディスクに差し込んだ。
 《歯車街》の真なる役目。街はかりそめの姿。
 その役割は兵器を製造し、――そして秘匿すること。

「《歯車街》が破壊されたとき、手札・デッキ・墓地から
 アンティーク・ギアと名の付くモンスター1体を特殊召喚できるノーネ!」


《歯車街》
【魔法カード・フィールド】
「アンティーク・ギア」と名のついたモンスターを召喚する場合に
必要なリリースを1体少なくする事ができる。
このカードが破壊され墓地に送られた時、自分の手札・デッキ・墓地から
「アンティーク・ギア」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。


 街の映像が消え、巨大な影がクロノスの背に浮かび上がる。

「アンティーク・ギアのもう一つの切り札を見るノーネ!
 《古代の機械巨竜(アンティーク・ギア・ガジェルドラゴン)》をデッキから特殊召喚するノーネ!」

 一見すれば、鉄くずを積み上げ、やっと竜の形に仕上げた単に巨大なだけの鉄の塊。
 だが、その実は、種々の歯車機構により駆動する精巧なる要塞兵器。
 そして、街は失われても、機械城の支援砲撃は健在である。


古代の機械巨竜(アンティーク・ギア・ガジェルドラゴン) []
★★★★★★★★
【機械族・効果】
このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。
以下のモンスターをリリースして表側表示で生け贄召喚した
このカードはそれぞれの効果を得る。
(生け贄召喚でないため、以下の効果は不発)
ATK/3000 DEF/2000



《古代の機械巨竜》ATK3000→3300(《古代の機械城》の効果)


「そして、さらに手札から《アームズ・ホール》を発動すルーノ!
 選択するノーワ――」

 デッキの一番上から、コストとして《大嵐》が墓地に送られる。


《アームズ・ホール》
【魔法カード】
自分のデッキの一番上のカード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキ・墓地から装備魔法カード1枚を手札に加える。
このカードを発動するターン、自分は通常召喚する事はできない。


 手にするのは、クロノスが新たに選択した力。
 自分を超えていった教え子の面影を込めたカード。
 その強さを、クロノスは固く信じている。

「《ニトロユニット》! 戦闘破壊したら、ダメージを与えるカード!
 《究極竜騎士》に装備するノーネ!」


《ニトロユニット》
【魔法カード・装備】
相手フィールド上モンスターにのみ装備可能。
装備モンスターを戦闘によって破壊し墓地へ送った時、
装備モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。


 思わぬ一手にギャラリーが湧く。

「戦闘破壊したら、効果が発動するカードですと……!?
 この《究極竜騎士》を戦闘破壊する……だと……!!?」

 着実に勝利への布石を展開するクロノスの戦術。
 シルキルの恐れが現実のものとなっていく。

「バトルなノーネ!!
 《古代の機械巨竜》で《究極竜騎士》に攻撃なノーネ!」

 鉄と鉄が交差し、軋む音が鳴り響く。
 エネルギーが竜口に集まっていく。

「なんですと!?
 《DNA改造手術》の効果で、《古代の機械巨竜》はドラゴン族!
 《リミッター解除》は使えないはず!
 超えることは不可能です!!
 迎撃です!! 『銀河にあまねき轟く滅びの竜星群(ギャラクシー・ドラゴニック・メテオスウォーム)』!!」

 混沌の騎士が、究極竜を駆る。
 その絶対のコンビネーションから繰り出される破壊の奔流。
 色鮮やかにさんざめく波動が、機械竜を飲み込むべく放たれ――。

「ここでリバース発動なノーネ!!」

 ――その巨大な奔流は跳ね返され、中空に散りばめられた。
 《古代の機械巨竜》の周囲に、光の粒が集まっている。

「何!!?」

 《古代の機械巨竜》はメタリックボディにコーティングされている。
 銀色に光り輝く魔法反射装甲。
 エネルギーの充填は完了である。
 敵の砲撃までも吸収して、十分すぎるほどに。

「《メタル化・魔法反射装甲》を発動したノーネ!
 自分から攻撃したときに、相手の攻撃力を上乗せするカードなノーネ!」


《メタル化・魔法反射装甲》
【罠カード】
発動後このカードは攻撃力・守備力300ポイントアップの装備カードとなり、
モンスター1体に装備する。
装備モンスターが攻撃を行う場合、そのダメージ計算時のみ
装備モンスターの攻撃力は攻撃対象モンスターの攻撃力の半分の数値分アップする。



《古代の機械巨竜》ATK3300→6300


「これが私の高攻撃力モンスターへの対抗策!
 相手が高い攻撃力で攻めてくるなら、利用するまでなノーネ!」

 《メタル化・魔法反射装甲》、《ニトロユニット》。
 どちらも相手の攻撃力を参照し、高ければ高いほど効果を発揮するカード。
 これがクロノスの、斗賀乃に対抗するための策。
 クロノスのデッキの新しい力。

「お返しなノーネ!! 《古代の機械巨竜》!
 『アルティメット・メガ・インパルス』!!」

 口腔から激しい暴風が吐き出される。
 魔法反射装甲で拡散したエネルギーとともに、《究極竜騎士》を襲う。
 四方八方からの光線が襲い来る。
 予期せぬ反撃に、体勢を崩す竜とその騎士。
 さらに追い討ちをかけるように、《ニトロユニット》が誘爆する。
 大爆発が巻き起こり、何も見えなくなる。
 そして、《究極竜騎士》は跡形もなく消え去った。


シルキルのLP:3500→3200→0


 クロノスの大逆転勝利に歓声が巻き起こる。
 拍手が会場を埋め尽くすように響き渡る。
 これで斗賀乃に脅かされた面子が保たれた。
 この喝采ならば、面目躍如とさえ言える

 貴重な機会を与えてくれた対戦相手に、感謝と敬意を。
 クロノスはシルキルに歩み寄り、握手の手を差し伸べた。
 シルキルは呆然とその手を見つめ、弱々しく手を伸ばし返した。
 ぎこちなく握手がかわされ、クロノスは心配そうにシルキルを見つめる。
 握手の手が緩められると――。
 シルキルは背面の出口に向かって、駆け出した。

 勝負の興奮に、それでも拍手は止まない。
 クロノスは虚を突かれつつも、翼たちへ叫んだ。
 かき消されないように、大きな声で。

「シルキルを追いかけるノーネ!!」

 翼は真っ先に控え席を飛び越え、反対側の出口へと駆け出した。
 他の『フリークス・バスターズ』のメンバーも後に続く。
 見渡せば、森の方角に一心不乱に駆けていくシルキルが見えた。
 速い。
 精霊と融合した怪人の身体能力は、やはり人間離れしている。
 すぐさま翼も全速力で追いかける。
 翼はもともと運動が得意で、キャンプや探検も好む。
 その脚力と慣れたステップには、空を駆るオネストくらいしかついていけない。

(そんなにあの怪人のことが気になるのですか?)

 オネストが実体化せずに精霊の声で、翼に問いかける。

「うん。前のイルニルさんと闘ってから、ずっと気になってたんだ。
 もう一度会って話をしてみたいって、思ってたんだ」

 翼の様子をうかがうように、オネストは問い続ける。

(何を話そうというのです?)

「俺には精霊の心が伝わってくるんだ。
 イルニルさんも、今デュエルしてたシルキルさんも、悪さをしようとしていない。
 イルニルさんは純粋に新しい動物を見たくてデュエルしてたみたいだし、
 シルキルさんも強さを求めて、デュエルの腕を磨いてるだけみたいだった。
 だから、やっぱり融合させた奴とか、背後にいる奴が悪いんだと思う」

(……なるほど)

「だから、俺はシルキルさんたちを解放したい。
 精霊を利用しようとする奴は許せない。
 でも、利用されて動かされてるシルキルさんたちは助けたいんだ」

(怪人も一筋縄ではいかないと思いますが)

「それでも俺はもう一度向き合ってみたい。
 イルニルさんのときは助け切れなかったけど……。
 今度こそ、話し合って、事情とかもちゃんと聞きたいんだ。
 だから、クロノス先生と話してたときの動揺も気になるんだけど……」

 駆けながら、翼はふと気づく。
 この道のりには覚えがある。
 あのとき……。

「オネスト。この方向って、やっぱり……」

(森の方角。イルニルとデュエルした場所に向かっているようです)

「そうだよね。基地っぽいところはこっちじゃないよね。
 一体何のために……」


 シルキルは無我夢中で駆けていた。
 最高のデッキを手にしていた。
 最高の戦術を研究したはずだ。
 ならば、なぜ負けたのか。
 どこに負ける要素はあったのか。
 デュエルを左右する他の要素は何か。

 駆けながら、問いかけを何度も繰り返す。
 その度に脳の奥に鈍い痛みが炸裂する。
 本能が拒んでいる。
 ――その問いかけは危険だ。
 ――自己保存を阻むものだ。
 
 だが、それでも答えを知りたい。
 いや、知らなくては、自分に意味が無くなる。
 自分が勝てない理由。
 それは――。
 手を伸ばして欠片を掴んでは、突き飛ばされる。
 その繰り返しの果てに、見えた答えは――。

 ――自分の骨子の弱さだ。

 勝つ理由が無い。
 背負う過去なくして、足場を踏み固められようか。
 目指す未来なくして、力強く歩み続けられようか。
 だが、今の自分には過去がない。
 未来も……、この戦いの果てに何が……。

 思い出すな/思い出せ。
 考えるな/考えろ。
 今のままでいい/今のままではいけない。
 ただ愚直に強さを/なら真摯に強さを。
 求めるのだ/求めるのだ。
 
 本能と理性のせめぎ合い。
 心臓が早鐘のように鼓動し、警告する。
 このループを繰り返していては、自身が焼き切れるだけだ。
 このままの自分では、本当に強く在ることはできない。
 自分から抜け出すための何かを。
 この壊れた理性(ルーツ・ルインド)を超えなくては。

 本能のまま駆け出していた足が、その地面を踏みしめたとき。
 地脈から身体へ、力が電流のように突き抜けた。
 この力の残り香は何だ?
 手繰り寄せて、すぐに理解する。
 この力を自分は知っている。
 傍にいた、驚嘆すべき野生(インクレディブル・アニマル)――イルニル――の力ではないか。
 消滅させられたとは聞いていた。
 だが、森に住まう幻獣の力ゆえに。
 こうして地脈と同化して、眠っていたのか。
 しかし、単独では存在できないほどに意思に欠けている。
 それでも、自然の力の巡りをも取り込み、雄大な息吹を感じる。

 ――これならば。
 大地に手を当て、自らの能力を発動する。
 描き出せ。
 この幻獣の力を元として。
 自分が思う、最も強いものを。
 一つとなれ。
 規定された己の限界を超えるために。

(その方法だと、いけない)

 脳裏に女性の声が響いた。
 見知った声。自分と同じく、あの方を慕う者。
 力を留め、その警鐘に意識を傾ける

(確かに今のイルニルは意思に欠損がある。
 でも、それはあなたも同じこと。
 あなたは自身の能力で、単独で融合を繰り返すこともできる。
 でも、人と精霊が融合すれば、魂が摩耗し合う。
 次の『魂の変質』に、あなたは耐えきれない。
 さらに人間であった意識が摩耗する。
 これ以上意思を重ねたら、今度こそ人間としてのあなたをすべて失う)

「であったら、どうすればいいのです!
 私の意思は既に本能に支配されているようなものです!
 こんな混濁した意識は、もう耐えられないのです!」

(それで自分の記憶を、全部失ってもいいの?)

 見透かすように、ささやきかける声。
 嫌悪感が嘔吐感さえ伴い、胸のうちを駆け巡る。

「私の限界を、そうやって規定しないでくれ!
 私をもう見下さないでくれ。
 私はそんなに劣っているのか。
 私はこんな薄弱な意思との融合にも耐えられないのか。
 そんなはずはない。
 今度こそ、成し遂げてみせる。
 ――私は本当の自分を取り戻す」

(……………)

 シルキルの訴えに、返事はなかった。
 一方的に、警告は跳ね除けられた。
 能力の発動が再開される。
 描き出せ。
 この幻獣の力を元として。
 自分が思う、最も強いものを。
 視界が赤に染まり、熱が身体を書き換えていく。

(違う方法を探すほどの余裕もないのね。
 いつも通りに、楽な方へと落ちて。
 また自分から逃げる……)

 赤と黒に明滅する意識の中で。
 もう何も考えられなくなっていく。

(仕方ないことかもしれない。
 誰でも楽になりたい。
 眠ければ眠りたい。
 嫌なものには、触れずにいたい。
 重すぎて、手放したい過酷もある。
 背負いきれるほど、誰もが強くない。
 だから、――おやすみなさい)

 その言葉は許容か、諦めか、自戒か。
 彼女は今手放される物語を、そのまま見送った。


 森の入り口は、赤く染まっていた。
 精霊の魂が交じり合い、発生する融合の赤い熱。

「この力は、融合の力!!?
 それにこの場所はイルニルさんの!」

(まだイルニルの力が残っている!
 それを取り込むつもりです!
 力が融合すれば、取り返しがつかなくなる……!)

 脅威を前に、オネストは打開策をひらめく。
 自分たちのチームには、精霊の力を持つ者が加わったはずだ。

(今ならまだ間に合います!
 今のうちに、その力で無力化を!)

「……嫌だ」

(なぜ!)

「俺はシルキルさんたちと話がしたいんだ!
 何も聞かずに、消すなんてことはできない!
 シルキルさんたちは、きっと悪くない! 
 特別な力があるだけで、悪いわけじゃないんだ!」

(……それほどの力の余裕があるのですか?
 合わさって止めようのない力になっても?)

「そんな余裕なんてないけど。
 それでも俺は話をしてみたいんだ」

 オネストはため息をつきながら、翼を見返した。
 まっすぐな眼差し。
 とても説得できそうにはない。
 まして精霊の自分では、力で従わせることもできない。
 もっとも仲間相手に実力行使など論外な話ではあるが。
 しかし、その志は見定めてみるだけの価値はあるだろう。

(自分の安全よりも、志と興味を選ぶのですか……。
 そうですね。私も異端の精霊です。
 彼らがどんな道を選び取るかには、興味があります。
 私にも、彼らが特に悪意があるようには思えない。
 見届けるとしましょう)

「ありがとう、オネスト。
 きっと、うまくやってみせるから」


 そして、融合は進んでいく。
 《破壊神ヴァサーゴ》の黒い体をベースにしたのか。
 だが、身体は獅子の力を取り込んだように発達している。
 骨だけだったヴァサーゴの翼も、白く神秘的な羽根を得た。
 体格は巨大で、人間のおよそ倍はあるだろう。
 赤いたてがみに、融合の熱が収束していく。
 全身に発達した筋肉で、二本足で大地に降り立つ黒き獅子幻獣。
 目を見開き、拳を握り締め、新しい身体の感触を確かめる。

「感覚も、視覚も鮮明……」

 思わず口から漏れた最初の言葉は、『感銘』だった。
 本能と理性のせめぎ合う、混濁した意識の乱れもない。
 極めて清浄な意識。クリアでシャープなマインド。
 私の名は白銀の溶鉱炉(シルバー・キルン)――シルキル――。

 シルキルは自分の意識を発達させつつ、イルニルの力を取り込んだ。
 その意識で、自らの過去を思い出そうと探る。
 しかし、砂さえ掴めないほどに、何も手繰り寄せられない。
 二度目の融合で、完全に人としての記憶は溶けてしまったらしい。
 それが良いことか、悪いことかは分からない。
 記憶は自分を鼓舞することもあろう。
 だが、自分を立ちすくませることもあろう。
 その記憶が自分にとって、どんなものであったか。
 もう思い出せない。考えようが無い。
 だが、酷く寂しいことのように感じる。
 『シルキル』としての記憶はある。
 行動指針も分かる。
 強くなり、精霊を捕らえることだ。
 だが、このまま再開しても良いものなのか。
 求めても手に入らぬものは、切り捨てよ。
 その単純な判断をするために、どうしてこうも戸惑うのだろう。

 ……その前に、目の前の状況を処理せねばなるまい。
 過去がなくても、闘うことはできる。
 それでも何かを打ち立てられる程の力を感じる。
 未来には向かえる。
 目の前に対峙する少年と精霊を見据える。
 後ろからその仲間らしき少年少女も駆けて来ている。
 彼らを振り払わねばなるまい。
 姿を隠すだけならば簡単だ。
 自分にはその能力が備わっている。
 だが、己の中の幻獣の魂がうずいている。
 目の前の少年への親愛の情と、そして……。
 今の自分は、自己認識に乏しい。
 この得体の知れない情念の正体を掴むべきだ。
 自分の新しい力の実態も、まだ掴みきれていない。
 そのために自分がすべきことは……。

「なるほど……。この身体になっても心はうずくというわけですね。
 私の中の幻獣が、あなたとのデュエルを望んでいます。
 そして、私自身もこの力を試してみたい。
 どうかデュエルしていただけませんか?」

 腕を目の前にかざし、ディスクとデッキを顕現させる。
 静かに胸が高鳴る。なぜかとても心地のよい気分だ。

「――いいぜ! デュエルなら受けて立つよ!」

 少年は意気揚々とディスクを掲げ、構えた。
 心の躍るデュエルとなるだろう。
 自分の中の何かをきっと取り戻せる。
 そんな予感が沸き立つような、明朗で威勢のいい声だ。

「 「 デ ュ エ ル !! 」 」


新シルキル VS 翼


 新しい自分を確かめるデュエルが始まる。


「私のターンです! ドロー!!」

 翼が問いかけるまでもなく、デュエルが始まった。
 デュエルならば、お互いにカードを通じて心が伝わる。

「あの姿は!! 久白、大丈夫か!」

 後ろから藤原の戸惑いの声が聞こえる。

「大丈夫だよ! ベルトもない!
 俺たちは、ただデュエルをするだけだよ!
 そうだよね!」

 翼が目の前の幻獣となったシルキルに問いかける。

「その通りです。
 害意はありません。
 私はあなたとデュエルがしたい。
 そして、私自身を確かめたい。
 それだけです」

「な、なんかクロノス先生のデュエルの時と違って、落ち着いてるね。
 いきなり一つ大人になった感じというか……」

「黒い空飛ぶライオン……。
 無茶苦茶強そうだけど、翼なら大丈夫だよね……」

 レイと明菜からも戸惑いの声。
 しかし、翼には確信がある。
 きっと面白くて充実したデュエルができると。

「私は《融合》を発動!
 3体のモンスターを融合させます!」


《融合》
【魔法カード】
手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた
融合素材モンスターを墓地へ送り、
その融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。


 シルキルは3枚のカードを手札からかざす。
 場に3体のモンスターが現れる。
 疾走する青雷の天馬、《幻獣サンダーペガス》。
 優雅なる黄金の鳥獣、《幻獣クロスウィング》。
 そして、仮面の黒き悪魔、《破壊神ヴァサーゴ》。
 すぐに姿を変え、黒き獅子《幻獣王ガゼル》となる。
 目の前が融合の赤い光に包まれる。
 それは先ほどまで行われていた魂の洗練の過程。
 黒き獅子の身体。
 幻想的な白き翼。
 燃え盛る紅きたてがみ。
 シルキルの思い描いた、最も強いものの姿。

「私自身、《覇界幻獣ヴァラーグリーヴァ》を融合召喚!!!」


《覇界幻獣ヴァラーグリーヴァ》 []
★★★★★★★★
【獣戦士族・効果】
「幻獣王ガゼル」+「幻獣」と名のついたモンスター×2
???
ATK/2500 DEF/2400


 今のシルキルと瓜二つのヴィジョンが降り立つ。
 両腕を広げ、大きく翼を広げ、高らかに咆哮する。
 何もない場所からでも。
 誇らしげに力強く、新しい世界へと挑みかかるように。


スポンサーサイト
23:25  |  ヒカコリライト  |  TB(0)  |  CM(8)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●歯車街の本来の使い方

がついに登場!
あんまり関係ないですがスクラップデッキを使っていると歯車街を
デッキに入れたくなるのですが、事故が結構怖い……!

ちょっぴり短くまとめると、
シルキルさん深く描かれる編。
翼君が戦っているから主人公空気化(?)はひとまず安心かな?
kunai |  2011年07月28日(木) 19:43 |  URL |  【コメント編集】

●シルクハットの中には歯車街が2つ

 スクラップシルクハットというデッキを作って、歯車街回したら、スクラップさん出てくる前にデュエルがよく終わってました。普通のスクラップデッキで相性はいいのかな。今度試してみよう。

 シルキルさんが深めに描かれています。フォーカス的には完全にシルキルですね。とはいっても、具体的にシルキルさん個人というよりも、ルーツ・ルインドの悩みのサンプルケースを書いたものになっています。その行き着く先が焦点になります。

 翼くん今回は空気化してないはず! むしろレイと明菜が(ry ……と思ったけど、5話はそのまんまだし、結構バランスよくできてるのかも。藤原わかめは相変わらず普通によくしゃべってくれてるしな!
村瀬薫 |  2011年07月30日(土) 10:57 |  URL |  【コメント編集】

●破壊神ヴァサーゴが輝いた瞬間

 リライト前ヒカコに比べると、勢いが凄くありますね。クロノス先生にも出番があって何よりです。

 デュエル内容も相変わらずエースモンスターの運用がうまくて唸らされます。破壊神ヴァサーゴの精霊がここまで輝くとは……!
 
 シルキルが熱い人(精霊?)で、結構好みです。強くなりたい、期待に応えたいってのも悪くないですよね。

 少し気になったのは全体的に駆け足なところです。まだ翼も1回しかデュエルしてないうちに、クロノス先生や敵キャラの掘り下げは早すぎるような…?
 デュエルでは闇霊術+タン・ツイスターがちょっと浮いてました。一応闇属性のデコイチは入っていましたが、上の二枚はイメージ的にも合いませんからね。
ruto |  2011年07月30日(土) 16:29 |  URL |  【コメント編集】

●融合モンスが増えない今日この頃

 波動竜騎士やらうんたらもあったし、エクシーズの融合も出るのでしょうか。え? アーマードエクシーズ、何それ?w

 そんなこんなで勢いを増してお送りしてます。クロノス先生の出番もねじ込みました。詰め込んだ分、確かに駆け足感は否めないとは思います。ただ、流し読みすれば、あまり気にならない程度かな、とは考えています。そこまで情報量はないですしね。でも、もっとうまいやり方はあると思います。そこら辺は次回作以降の課題であって、今回では序盤を勢いづけることに重点を置きたいかな、と思っています。

 切り札はやはりシンプルなほうが目立ちますね。緩急がとてもつけやすいデュエルでした。この場合、逆に描写の方に力を入れざるを得ないのは、なるほどなーというところです。

 ヴァサーゴさん、何気に名前凄いし、容貌も格好いいし、もっといろいろできてほしかったのだが、誰も注目してないよね!w 上手く見せられていれば、幸いです。
 シルキルは健気ですね。細かい話は避けますが、やろうとすれば、小説1本書けそうなくらい共感できるタイプなのかもしれません。今回はそこまで書かないですけど、彼の選択と歩みを見守ってあげて下さい。

 ベロベロターボについては、うん、書きながら不自然だとは思ってました。前回に指摘がなかったのが、あれ?いいのかな?と思えたくらい。闇霊術については、【暗黒の中世】デッキなので、個人的にはまだ許容範囲かなと思います(もちろん人それぞれなところでしょうが)。他にも《強化支援メカ・ヘビーウェポン》とかいますしね。
 ……まぁ代替案があれば、是非とも差し替えたいですけど、難しいなぁ……。大嵐主力のクロノス先生が永続罠用いるのも不自然な感じもしますし。誰かいい案あったら、授けておくれw
村瀬薫 |  2011年07月30日(土) 19:25 |  URL |  【コメント編集】

●ガジェットをリリースして歯車巨竜を出すと隠された効果が発動するという謎の都市伝説

ヒカコリライト3話、待ってました!
クロノス先生、流石はアカデミアの教師だけあって貫禄。

《強者の威光》は血刻で使ってみたいカード。
なんかカード名はいい!
貫かれる覇道とかも気に入っているので連載再開したら使わせていただきたいところ。

>勝負を決めるフェイタルな一手まで、対抗策を温存する
ここは納得させられた部分。
ゲームでデュエルしていても、温存しておいてよかった!と思うことも多いですし。
まあ、温存しすぎてライフ削られて「警告撃てねえ!」な状況になることも時々あるんですけど。

>「《歯車街》のもう一つの効果だ」
ぶっちゃけリリース軽減のほうが「もう一つの効果」扱いされてるよね、このカード。
歯車街は破壊するためにあるんですから。

>シルキルは背面の出口に向かって、駆け出した。
カイバーマンの姿で駆け出されると、社長の「全速前進DA!」というセリフが浮かぶのは私だけでしょうか?

シルキルさんは、予想以上に深く描かれていますねえ。
この辺りの心理描写、実にヒカコテイストがします。
そしてまさかのイルニルさんとの融合。
ヴァザーゴさんをここまで活用してくるとは思いもしませんでした。
ヒカコwikiにあった新幻獣も登場し、次回も楽しみです。

それと誤字の報告。
「2ターン前から伏せていたリバースですと!
 《強者の苦痛》のときも、《DNA改造手術》のときも!
 いや、《歯車街》を破壊することだって、できたはずです!
 それをここまで温存していただと!!」
苦痛じゃなくて威光!
それと砂塵では自分のカードは破壊できない!
オウカ |  2011年07月30日(土) 21:48 |  URL |  【コメント編集】

●伝説は観測されて初めて実現する

 召喚制限が無い、軽いけど貫通効果のない巨人さんですよね。生け贄召喚? 何それおいしいの? 効果も無駄に長いので、略されてますw 酷い扱いですw

 そんなこんなで、クロノス先生がそれっぽくやってくれました。ヒカコのOCGリプレイ性を早めに打ち出しておく感じですね。
 ここのくだりの温存ってのは、やっぱ大事なコツですよね。私もこの辺分かってから、カードゲームが楽しくなった感じがします。まぁ出番回りにくいタッグだと温存してるうちに、取り返しつかなくなってたりしますけどねw

 《強者の威光》カード早めに登場してますね。高レベルが居座るとき、便利です。
 この辺の汎用系は、皆さん使ってOKですよ~。適用性も割と広めに作ってますし。他にも《ゼロ・リバイバル》とかもオススメです。でも、この辺全部使ったの悪役じゃねーかw ああ、血刻なら主人公がアレだし、問題ないかw

 全速前進シリアスに書いていて、気づかなかったw この辺の回って結構アニメ映えしそうですね。間違いなくシュールな感じになりそうではあるけれどもw コメントは盛り上がりそうですw

 シルキルさんは思ったより掘り下げられました。ここも2章以降のヒカコのノリを前借りした感じです。1章書いてるときは、あのテイストあまり出す気なかったんですけどね。ちなみに私本来のノリは、孤児院ルミナス編とかその他挿話がそれっぽい罠。
 どちらにしても、早めにヒカコのウリを出す感じにしてます。

 融合はやっぱりアツい! 新幻獣の登場で打ち切りは、実にガラリスの二番煎じ感があるww 効果も無駄に凝ったモノになってます。元ネタ分かる人はニヤニヤできるかと。次回は司書さんホイホイ? 早めに届けたいなぁ……。

 誤字指摘ありがとございます。《強者の苦痛》と打ってから修正してるのですが、追いついてない部分ですね。そして、砂塵。これは素で間違えてます。エンドサイクみたいにしか使ってないからなぁw いつも3積みしがちだというのに。 更新時には直しときますね。
村瀬薫 |  2011年07月31日(日) 10:07 |  URL |  【コメント編集】

●シルキルさんマジ主人公

そんなわけで第3話。
間接的にDNA改造手術が活躍してたのがちょっと感動です。
思えばリライト前の1話でも、翼のDNA改造手術がオネストを封じる手になってましたしね、ここはある意味受け継いだ所なのかも。

あと、私は《タン・ツイスター》登場に「おっ!」と思った部類です。
OCGで考えるとちょっと無理があっても、創作では映えるシナジー……だと、自分は思うんだけどなあ。

幻獣融合体を考えたのは私だけではなかった!
私は「不思議の国のアリス」縛りで考えてたけど、うまくいかず霧散したクチです。。

※カードの表記が見やすかったので、後々真似するかもしれません。
ラギ |  2011年07月31日(日) 22:54 |  URL |  【コメント編集】

●一番出番が多いとか、どういうことなの……

そんなこんなで、これは次回作の課題とします。

 《DNA改造手術》地味に使ってますね。個人的には種族とか属性大好きなので、もっと生かしてほしいところです。これからもそういう縛りを生かしたカードは好んで使っていくと思います。オリカでもその辺を好んで攻めてますしね。
 かぶせる気はあまりなかったですが、確かにそうっぽいのかも。後々もっと属性デュエルな新決闘が登場するかもしれません。

 《タン・ツイスター》はシナジー的にはかなりおいしいと思います。その辺は海馬に闇霊術使わせたラギさんならではの寛容なのかも。でも、キャラ的にクロノスは合わない感じは否めないんでしょうね……。例えばトウゴさんとかバクラが使ったなら、全然受け入れられる、むしろ合いまくりなのかな、と思います。

 幻獣マイナーすぎて、いろいろアレンジはあると思います! でも、確かに縛りの切り口は難しそうです。アリスならジャバウォックさんとか? 今の名前は形容詞+シンボルで踏襲しただけという感じですね。

 表記見やすいとのことで、ありがとうございます。でも、ブログだとソースコピーできないと思うので、ちょっとアップしときますね。
村瀬薫 |  2011年08月01日(月) 19:54 |  URL |  【コメント編集】

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://fiorism.blog53.fc2.com/tb.php/142-bb263cc8

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。