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 砂上のエピタフ 
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2011.01.16 (Sun)

キーリ1―死者たちは荒野に眠る

kiri.jpg

そんなこんなで、キーリです。
2002年、電撃ゲーム小説大賞“大賞”受賞作でございます。

【More・・・】

書き方はキーリを中心とした三人称。
キーリのカメラ要素も強く、心要素も強い。
対して、他の人は推定調で描写されている。

舞台は地球が崩壊した後っぽく、並行進化的な別惑星のお話。
争いの元である資源が枯渇して、劣悪な化石燃料しかなくて、
細々と暮らしている世界のお話のなのかな。
あと文明黎明的なところもあって、宗教で秩序を保つのも異質。

キーモチーフは、荒野・列車・夕焼け・砂の海。
さらに言えば、幽霊と人間の間の黄昏に漂う物語。
ファンタジー系は何かモチーフや世界観を印象付ける
何らかのモチーフが前面に出ていると分かりやすいかも。

基本的に章ごとに個別の問題が解決される短編つなぎっぽい感じ。


P10~P12<プロローグ>
「神様はいるの?」的なことをテーマにするわけだけども、
そのためには幼い頃からの何気ない疑問としてではなく、
何らかの事件や境遇で裏づけをできるだけしておきたい。
今回の場合はトラウマとして焼きつく事件を眼にして裏づけしている。
疑問を抱かざるを得ない出来事・境遇・個人的性質が必要になる。

P16~P21<浮いているキーリ>
自分だけみんなが気付いていない確からしきことに気付いている状況。
読者の想像をいろいろと掻き立てて、浪漫を呼び起こす。
あと、理解者がいるようだけど……。

P22<人物をようやく描写>
ここまでやり損ねていた主人公の描写をようやく。
それなりに珍しいパターンで、華やかな人と地味な自分を
対比して描き出すという形で描写を行っている。

P26<青年との出会い>
キーパーソンの核心をいきなりチラつかせて注目させる手法。
主人公と共通点があるっぽいのも大きい。

P30<ベッカは幽霊
何……だと……。
ということで、キーリはますますぼっち少女である。
幽霊ばかりと仲良くしているのである。


P33<キーリのプンスカ>、P48<こっちの身にも>
この辺の三人称から個人の心情描写を挿入する流れはとてもスムーズ。
この小説はこれが持ち味な感じもある。
思った・怒った・考えていた とかの先に、つぶやきを用意する感じ。

P34<気まずい食卓>
テンポ優先した一コマ。盛り上がらない様子をじっくり書かない。
盛り上がらない理由を一気に並べて、そのシーンを済ませている。

P37<はやくどっかに行っちゃえ>
このゴチりが地の文に感情描写的に混じるのは気持ちよくて痛快。

P41<語られる不死人>
こういう噂一人歩き系の実在を解き明かして、主人公だけ真実を知って、
なおかつその人間味や苦悩に理解を示していくのもよくある物語手法。

P44<捨て子>
自分の境遇や能力への疑問もよくある旅立ちへのきっかけ。

P45<カメラ主の変更>
立場が全く違うだけに、やっぱ読者として注目度が全然違ってくるし、

P52<轢かれた?>
「不死人かどうか、試したい!」
興味を誘導して、ちゃんと回収しているシーン。

P71~P72<ベッカの消滅
ネタバレのコツ。幽霊系の消し方。
自分の死んだ状況の再現や、願いの理解が幽霊さんを消す。
自分の置かれている状況を悟って納得して、
在るべき場所に戻っていく。過ぎた望みを手放す。


P84~<向かい合わせの二人>
霊を相対化しているか否かの対比複線。
同時にその人間性の度合いとかも対比になってはいる。
さらには大人と子供、無感動と動揺とかとか。
それが近づいたりを繰り返す感傷が、この作品の道筋。

P89<割りきりが着かないキーリ>
「何もできないのに、どうして見えるかな」
この好奇心や心配でトラブルに巻き込まれるのが、
全体的な物語の流れなのかなーと見えてくる。
1章ごと問題解決のお話は、こういう風に見える方が
読者も安心して世界に浸って読んでいられるかもしれない。

P126<他人だけが老いる>
人と幽霊という軸があって、青年はそのどちら狭間で彷徨う。

P130<さよならピエロ>
旅をしてその場所の霊たちの想いを見送る感じなのかなぁ。
内省的なイメージというより、感傷的なお話群なのね。
これで終局への伏線とか目的を少しずつ忍ばせるのがパターンっぽい。

P132<尾行中>
基本的に章ごとに1話完結でやっている感じ。
だから、章始めは敢えて謎めかせたり緊張感あるシーンにしたりして、
読者の興味やら注意を喚起していることが多い。

P171~172<悪役さん>
こういう平和な小説だと、少し怪しいだけですぐそう見えるwww

P185~189<ハーヴェイのトラウマ>
無口で無感動な男には、頑なになる理由があってもいいのかも。

P196~202<兵長との別れ?>
この旅のハーヴェイの目的。しかし、それを裏切ってくれる旅の拾いもの。
その物語前と後の変化を噛み締める感傷的なシーン。

P207~208<一緒にいられない>
読者は二人に一緒にいてほしいけど、そういうわけにはいかない。
その壁を絶対的に示して、物語の節目へと持っていく。
できることなら離れたくない、という二人の感情も強いままで。

P212<上方に見える光>
確かに、文章は「、」が少し少ないのかもしれない。
クライマックスとか展開が速いときに、そのクセが見受けられる。
切迫感も出るし、それを狙っているのかもしれないけど……。

P216~217<生きるか? 選択肢>
決定的なシーンの後に、カメラが切り替わる。
そして、理解者からの問いかけがあって、次章へ。
やっと二人の物語の意味が問われるシーンに。

P220~222<ネコさん埋葬>
ネタバレ。帰っている……だと……。
だんながあんなに必死なシーンだというのに!
と思わせておいて、まぁ読者さんの注意を惹きつけるのよね。
まぁ、この子は無力な少女だし、チャンスが与えられる系なのは、
どうしても仕方なくなってしまうのだろうなぁ。


P230<神様への疑問、再び>
不条理な慈悲ばかり押し付けて、その人を思いやらない心無き神。
その悟りはハーヴェイさんにも近い。闘う側にちゃんと着いたかな。

P239<迷う理由は何一つなかった>
逆に少女は失うものも故郷への未練もないから、
ものすごく動きやすいのよね。無謀にもなれる。

P243<目の前にあるのは過去の惨劇の再現
ネタバレのコツ。
心臓核をくりぬかれた不死人。幼い頃の疑問を決定的にしたイメージ。
目の前にトラウマと同じ状況を再現することは、今の少女ならどうする。

確かにこれだけで立派なドラマやら成長劇になるねぇ。

P261<少女にできること>
ネタバレ。まぁ必要な道具を送り届けることも立派な役目。
女性作家にしては、こういうずるさに上手く乗っかっているなぁw
これが少年がやったとしたら、危ないっての理解してやってるぞこれw

P271<光の見える方へ>
ネタバレ。P212の「、」の少ない文章はこれを印象づけるためか!
リフレインさせるための布石か!
たまに不自然な文章やら名文で、違和感付きで印象付けてしまうのは、
確かにアリと言えばアリだけど、ものの見事に長い文章覚えてたのぅ……。


P274~P277<エピローグ>
ネタバレ。しみじみとした再会と再出発。
神様への嘆きが相対化されてしまって、願いとかもしちゃってるのもポイント。
嘆きを願いに留められるのは、立派な成長の証とも言えるのかも。
あと願いとなれば、やはり切ないしねぇ。
まぁ定番な終わり方でした。



以下は俯瞰的なネタバレ。
前の作品の、狼と香辛料のネタバレも少し含む。
俯瞰して、適当にプロットパターン見てみるお。


構成としては、1話完結連結式に近い。
変化者ってのは、日常に変化をもたらす来訪者を指してみる。
プロローグ:主人公のトラウマ
1.主人公の境遇と変化者との出会い(長め)
2.旅立ちと物語パターン提示
3.パターンやりつつ、変化者の悩みほのめかす。
4.パターンやりつつ、変化者の過去を一つ明かす。
5.劇的な物語。変化者の過去の因縁に基づく絶望と別れ。
6.劇的な物語。過去のトラウマの再現との対峙。
  それに向き合い、克服して旅立とうとするが……。
エピローグ:再会と旅立ち、終わり。

ってな感じで、割と定番プロット。
「狼と香辛料」もほぼ同じプロットとも言える。
パターンの部分が、あっちは経済、こっちは霊イベントなだけ。
かなり汎用性は高いので、日常系が濃い目なら流用可能かも。


ただ、いまどきこの小説をやったら、カテゴリーエラーも怖いところ。
女の子主人公で共感に読者レベル要求、ファンタジー要素地味、
恋愛要素やヒロインの数の乏しさなど、売れない要素も目立つ。
それを克服させた読みやすさと軽妙さは、賞賛しておくべきなのかも。


・私信
てなわけで、予測は一つ正解でございます。
あのヒントからよく当てやがったwww

ちなみに塩の街もなぜか読んでます。
過去にラノベに入ろうとして、諦めるきっかけにした3作の一つw
あれは薄味すぎて受け付けなかった感じです。
使い古されたテーマ・境遇だと、独自性振り切れないとムリっす。
私の中では競争作品が多すぎて受け付けませんでした。
同じような境遇だと、「ひとめあなたに……」くらいやって欲しい。
ちなみにそのうちもう1つはキノの旅の1巻w 
今思い返すと、どっちもクセ強すぎるww
あと一個はタイトル買いした作品でしたね。
マイナーです。「世界が終わる場所へ君をつれていく」。
私がラノベをタイトル買いしなくなったきっかけの作品w
悪くは無いんだけど余韻が薄い、ってのが全般の印象でした。
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11:20  |  ラノベ備忘録  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●もろもろ

>キーリ

 当てたぜー。
 私には、一般投票のランキング順位当てとかよりも、よく知った人の思考に潜っていって何かを予想する方が向いている気がしています。というか、前者をことごとく的中させられる方々の思考回路が理解できない……。

 個人的に、女の子主人公な作品がどんどん希少種になっていくのがラノベ界に対する大きな不満の1つだったりします。せめて……10%くらいのシェアは保って……! このままだと絶滅するぞ……!
 カテエラ扱いされる理由もよく分かるんですけどねぇ。
 でもまあ、「受賞しにくい・企画通りにくい → それでも出版される作品は、その欠点を補って余りある長所アリ」ってな感じなのかどうなのか、読んでて少数精鋭なイメージがあります。女性主人公。

 あと、ぼっち言うなw


>塩の街

 予想するとき、「村瀬さん、すでにこれ読んでる可能性、それなりにあるよね?」とは多少思いましたが。

 ライトノベルの中においてはあまり見ないタイプの作品なんですが、もうちょい枠を広げるとありきたりな設定だというのは確かに。
 せっかくラノベでやるんだから、ラノベ独自の要素をもっとうまく融合させられればなー、とか思ったように記憶しています。


>キノの旅

 強いよねぇ、クセ。
 同作者の『~~が運ばれてくるまでに』シリーズに至っては、クセが強いという言葉では片づけたくない何かがw


>世界が終わる場所へ君をつれていく(なぜか読んでた)

 何年か前に読んだけど、あんまり内容頭に残ってないごめんなさい……。
 たしか突然でっかい金属の樹が生えてきてボーイミーツガールして云々……だったよーなw

 スタージョンの法則を心に留めつつ、ハズレを恐れずトライし続けてこそ、心に残る名作が得られるのさ!
豆戦士 |  2011年01月16日(日) 21:35 |  URL |  【コメント編集】

●もっと広い度量で!

・キーリ
 ぼっち少女かわいいよぼっち少女w そういう子に手を差し伸べる系のお話、個人的嗜好の次元では大好きです。そういう意味で、key作品は大体全部ツボ。

 ですねぇ。これ系面白いと思うのですが。私も女主人公系好きなほうなんですけどね。女の子一人称書くのがそれなりに好きですし。少数精鋭論は同意。ただ流行に乗っかっているのは、逆にうちらみたいに数こなしてるとハズレが怖すぎて触れにくい罠。

・塩の街
 その通りで、この設定なら私も読めそうかなーと思いきや、他と競合してしまった作品です。決して作品自体は悪くないのですが、これで大賞は……と一度ラノベから離れる原因になってしまいました。今思うと、私に合わない作品を作為的に選んだかのようなラインナップであるwww

・キノの旅
 これもある意味、ラノベのフィールドで勝負していない本なんですよね。だから、カフカとかと戦うことになって、重さとか味で負けることになります。明らかに運が悪い。今読んだら印象変わるのかもしれませんが、私が夢中になれる類でない事に変わりはありません。

・世界が云々
 タイトルはドツボでしたが、特に響かなかった作品です。内容は大体合ってますw というか、私もそれくらいしか覚えていない印象の薄い作品だったり……。


 まぁ基本的にそこまで冒険しないタチですし、最近は吸収もたくさんしてますし、まだまだ読んでない名作といわれているものも多いので、しばらくやるとすれば名作めぐりです。あと1作で一段落ですが、執筆が一段落したらレビュー再開するかもしれませんね。
村瀬薫 |  2011年01月16日(日) 22:26 |  URL |  【コメント編集】

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